太陽光発電は元が取れるか|国の公表値だけで回収年数を計算した【2026年】

本記事にはPRが含まれる場合があります

「太陽光発電は元が取れる」と書く記事と、「元が取れない」と書く記事の両方が存在します。どちらかが嘘をついているわけではありません。前提の数字を都合よく選べば、どちらの結論でも作れる——それがこの問いの実態です。

そこでこの記事は、前提の数字を一切自分で決めません。発電量・売電価格・自家消費の便益・維持費——回収計算に必要な全パラメータを、経済産業省・調達価格等算定委員会の最新資料(2026年2月公表)の公表値だけで揃えて計算します。結論を先に示します。

設置価格(5kW)回収年数20年間の収支
上位30%水準 25.6万円/kW(128.0万円)約15年半+約32万円
平均 28.9万円/kW(144.5万円)約18年+約16万円
約32万円/kW(160万円)約20年=ぎりぎりほぼ±0
35万円/kW(175万円)20年で回収できない−約15万円

※点検・パワーコンディショナー交換まで含む推奨水準の維持費(後述)を織り込んだ場合。国の想定する運転年数は20年。

ご覧のとおり、「元が取れるか」の答えは、発電量でも売電価格でもなく、いくらで設置したかでほぼ決まります。分水嶺はおよそ32万円/kW。以下、この表がどう計算されたかを、途中式まで全部開示します。

計算に使った数字|すべて国の公表値

使ったパラメータは次の8つです。出所はすべて調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月公表)で、原文PDFを直接確認しています。

パラメータ数値備考
設備利用率14.1%2025年1〜8月の実測平均(想定値13.7%より高い)
余剰売電比率64.8%実測平均(残り35.2%が自家消費)
自家消費分の便益27.45円/kWh買わずに済んだ電気代。大手電力の直近10年の家庭用単価+消費税
売電価格(1〜4年目)24円/kWh2026年度・初期投資支援スキーム
売電価格(5〜10年目)8.3円/kWh同上。二段階制
売電価格(11年目以降)10.0円/kWh卒FIT後の買取メニュー平均(2025年12月時点)
維持費(推奨水準)5,740円/kW/年定期点検3.8万円を3〜5年ごと+パワコン交換38.4万円を20年で1回、の年割り換算
設置費用25.6万〜28.9万円/kW2025年設置の上位30%水準〜平均(設置費用相場の記事参照)

まず年間発電量。5kWのシステムなら、5kW × 8,760時間 × 設備利用率14.1% = 年間約6,176kWhです。

この発電量の35.2%(約2,174kWh)を自宅で使い、64.8%(約4,002kWh)を売る。これが国の実測に基づく平均的な家庭の使い方です。年間の便益はこうなります。

期間自家消費の便益売電収入年間合計
1〜4年目(売電24円)約6.0万円約9.6万円約15.6万円
5〜10年目(売電8.3円)約6.0万円約3.3万円約9.3万円
11〜20年目(卒FIT・10円)約6.0万円約4.0万円約10.0万円

ここで気づくことが2つあります。ひとつ、5年目に年間便益が4割落ちます。24円は最初の4年間だけで、5年目からは8.3円。「24円で売れる」前提で20年計算すると、収入を大きく見誤ります。ふたつ、5年目以降の稼ぎ頭は売電ではなく自家消費です。買わずに済む電気は1kWhあたり27.45円分の価値があり、8.3円で売るより3倍以上の価値があります。

回収年数のシミュレーション|5kWでの累積計算

維持費(推奨水準5,740円/kW/年=5kWで年間約2.9万円。点検とパワコン交換の積立を含む)を差し引いた累積収支で、設置価格ごとの回収時期を計算します。

経過年累積便益(維持費差引後)128.0万円で設置144.5万円で設置160万円で設置
4年目約50.9万円未回収未回収未回収
10年目約89.4万円未回収未回収未回収
15年目約124.9万円15年半で回収未回収未回収
18年目約146.2万円回収済約18年で回収未回収
20年目約160.4万円回収済(+32万円)回収済(+16万円)ぎりぎり±0

読み取れる事実は3つです。

  • どの価格で買っても、10年では元が取れません。「10年で回収」という営業トークは、この公表値のどれかを大きく上振れさせないと成立しません
  • 国の運転想定である20年の中で元が取れるかは、設置価格でほぼ決まります。分水嶺はおよそ32万円/kW——これを超える価格で契約すると、平均的な発電・消費条件では20年働いても元が取れません
  • 上位30%水準(25.6万円/kW)と平均(28.9万円/kW)の差は、設置時にはたった16.5万円ですが、回収時期を2年半早め、20年の黒字を2倍にします

なお、国自身は2026年度の制度を「税引前IRR 3.2%」を想定して設計しています。制度としては元が取れるように作られている——ただしその前提のシステム費用は25.5万円/kW、つまり上位30%のトップランナー水準で買えた家の話です。平均価格やそれ以上で買った家は、制度が想定する回収シナリオの外側にいます。

「元が取れない」と言われる3つの理由と、実際に取れなくなる条件

① 平均より高い価格で契約した——最大の理由

上の表のとおり、32万円/kWを超えると20年でも回収できません。訪問販売など販売コストの重い経路では、この水準を超える見積もりが実際に提示されます。逆に言えば、「太陽光で元が取れなかった」という体験談の多くは、太陽光発電そのものではなく買った価格の問題です。

② 昔の売電価格のイメージで期待値が作られている

制度開始当初の売電価格は42円/kWhでした。現在は24円(4年間のみ)→8.3円の二段階制。売電で稼ぐ時代は終わっており、今の回収の主軸は「電気を買わずに済む」自家消費の便益(27.45円/kWh相当)です。売電中心の古い期待値で見ると「取れなくなった」ように見えますが、設置費用も当時より大幅に下がっているため、収支構造が変わっただけです。

③ 発電条件が平均を下回る家に設置した

この計算の設備利用率14.1%は全国の実測平均です。日当たりの悪い屋根、北向き設置、積雪の多い地域などでは発電量が平均を下回り、回収は後ろにずれます。業者のシミュレーションが自宅の屋根の向き・角度・日射条件を反映しているか、平均値を貼り付けただけかは、契約前に確認すべきポイントです。

回収を早めるために動かせるレバーは、実質1つ

回収年数を決める変数を並べると——発電量は屋根と地域で決まり、売電価格は国が決め、自家消費の便益は電気料金が決めます。契約者が自分の意思で動かせるのは設置価格だけです。

そして設置価格には、実際に10軒に3軒が到達している上位30%水準(25.6万円/kW)という目標があります。そこに近づく方法は、同じ容量・同等パネルの条件で複数社に見積もりを出させ、工事費・諸経費の上乗せ幅を比較することに尽きます。価格水準の物差しと判定手順は 太陽光発電の設置費用|相場は28.9万円/kW・狙うのは上位30%の25.6万円/kW にまとめています。

この計算には上振れ要素もあります。自家消費の便益27.45円/kWhは過去10年の電気料金平均に基づく値なので、今後電気代が上がれば、自家消費の価値はそのまま上がり、回収は早まります。逆に電気代が下がれば遅くなりますが、直近10年の趨勢は上昇側です。一方、パネルの経年劣化による発電量の低下はこの計算に織り込んでいないため、実際の後半年の便益はやや小さくなる可能性があります。

よくある質問

Q. 太陽光発電は10年で元が取れますか?

国の公表値どおりの条件では取れません。最も有利な計算(上位30%水準で設置・維持費を考慮しない)でも約11年、維持費まで含めた現実的な計算では15年半〜18年です。「10年で回収」という提案を受けたら、発電量・売電価格・自家消費単価のどの前提が国の公表値と違うのかを確認してください。

Q. 蓄電池をセットにすれば早く元が取れますか?

蓄電池は別の投資として計算すべきです。蓄電池を足すと自家消費率は上がりますが、蓄電池自体の費用(100万円超)の回収という別の問題が加わります。「セットなら元が取れる」という提案は、太陽光の収支と蓄電池の収支を混ぜて見えにくくしていることがあります。蓄電池側の判断は 蓄電池はやめたほうがいい?国のデータで計算すると答えが変わる で扱っています。

Q. 卒FIT後の10円/kWhはずっと続きますか?

保証はありません。10円は2025年12月時点の買取メニューの平均値で、しかも委員会は「10円/kWh水準以上のメニューは電気供給とのセット販売や蓄電池併設等の条件付きであることが比較的多い」と注記しています。本記事の計算でも11年目以降の売電は年間4万円程度で、収支の主役ではありません。

Q. 結局、いくらなら設置していいのですか?

本記事の計算では、20年で元が取れる設置価格の上限はおよそ32万円/kW(5kWで160万円)です。ただし「ぎりぎり取れる」を目標にする理由はありません。実在する上位30%水準=25.6万円/kW(5kWで128万円)に近づくほど、回収は早く、20年の黒字は大きくなります。

まとめ|「元が取れるか」は設置価格の問題である

国の公表値だけで計算した答えはこうです。上位30%水準で設置できれば約15年半で回収して20年で約32万円のプラス。平均価格なら約18年で回収して約16万円のプラス。32万円/kWを超えたら、20年働いても元が取れない

発電量も売電価格も自分では動かせません。動かせるのは、契約書にサインする前の設置価格だけ。「元が取れるか」と悩む時間は、見積もりの1kWあたり単価を確認する時間に使うのが、この計算が示す最も実務的な結論です。


調査・執筆:ソーラー見積もりナビ編集部(運営者情報)。本記事の計算に使用したパラメータは、すべて経済産業省 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月公表)にもとづき、原文PDFを直接確認して引用しています。計算はシングル発電・全国平均条件の試算であり、個別の屋根条件・地域・電力プランにより結果は変わります。特定メーカー・特定販売店からの広告料や情報提供は受けていません。記事にはプロモーションが含まれる場合があります。